宇治市木幡の御蔵山学区では、住みやすくて安心して暮らせる地域づくりを目的に、会員相互が「蔵」と呼ばれる「切符」を介して、助けたり助けられたりしながら生活上の困り事を解決する活動が展開されています。
助け合い活動の潤滑油“ありがとう”切符「蔵」
御蔵山学区の地域住民による助け合い組織「ゆう輪蔵ぶ」が結成されたのは2003年。代表で発起人の淵田紀代子さんが、一人暮らしのお年寄りの買い物に付き添うボランティア活動の際に、恐縮された相手の方からお礼の品を差し出されたことがきっかけとなったそうです。「助けたり助けられたりはごく自然なこと。遠慮や必要以上の気遣いをせずに助け合えるような活動を作れないか」と社協や知人たちに相談を重ね、自然と生まれる“ありがとう”という感謝の気持ちを「切符」(「蔵」)で表現する仕組みにすることで気兼ねない助け合いの「ゆう輪蔵ぶ」が生まれました。
この会は、入会金1000円で年会費などはなし。入会後、会員証と「蔵」のお試し券1枚が付きます。「蔵」は1枚100円。利用者が依頼し5人の世話人が援助者の調整を行います。依頼内容は、室内建具の修理、庭の手入れ、洋裁、買い物、ピアノレッスンなど多種多様。会員はある時は依頼者になり、ある時は自分の時間や技術・特技を活かして助ける側になる。歳をとった時のためにと、「蔵」を貯めることを楽しみにしている人もいます。
顔を合わせて地域の縁を広げる“よろず相談”の場づくり
御蔵山南集会所を訪ねると、元気な笑い声が聞こえてきました。室内では、地域の介護事業所の男性スタッフが講師となり、いすに座ったままでできる健康体操が行われています。「では、その体勢のまま10数えましょう」と声がかかると、26人の参加者から「1・2・3…」と元気な声が上がります。これは、「ゆう輪蔵ぶ」が月1回開催する「わいわい倶楽部」という交流会で、この日は他にも「かるた大会」や参加者同士が自由に会話できる「おしゃべりタイム」、鍼灸師の会員によるマッサージコーナーもあり、約2時間をそれぞれが楽しんでいました。交流会も「蔵」1枚で参加できる仕組みです。
「わいわい倶楽部」は依頼を「する」「受ける」だけの関係でなく相互に交流できる場として2014年から始めた新たな試みです。「皆さんの楽しそうな顔を見ると、会を運営する苦労は吹き飛びます」と世話人の皆さん。わいわい倶楽部が、気軽になんでも相談ごとを持ち込めるような“よろず相談の場”になればと願っているそうです。
活動の周知や会員を増やすために毎月1回「ゆう輪蔵ぶニュース」も発行し、配布は会員の見守りを兼ねた活動になっています。しばらく顔を見せない会員には一言メッセージを添えるなど心配りと温かさをあわせた丁寧な活動がすすめられています。