住み慣れた地域で、高齢者が暮らし続けるために欠かせないのが、食の手配。喫茶店の事業活動を財政的な支えにした、配食サービスに取り組むボランティアグループがあります。
喫茶店の営業後に配食サービスがスタート
「定年後に何か役に立つことをしたい」と、旧知のメンバー7人で結成した「燦燦」。母親の介護を経験した代表の中川美智子さんの「食べ物は人を笑顔にする」との信念から、誰もが利用できる喫茶と配食サービスなど、「食」に関わる活動を始め、2015年で13年目を迎えます。
喫茶「燦燦」は、市役所前のスーパーの裏という立ち寄りやすい場所にあります。14時で営業が終わると、テーブルを並べ替え、そのまま配食サービスの準備へとスイッチ。スタッフが彩りよく盛り付けたお弁当は一個ずつ袋に詰められ、ルート毎に配達メンバーが徒歩、自転車、車で出来たての味を届けに行きます。
家庭の味と笑顔を届け、見守り活動も実施
配食サービスの対象は、65歳以上の一人暮らしや高齢者世帯で自分では調理が難しい人。利用者の健康を考え、自家製味噌や低農薬の野菜、米などを使用。マリネは油を使わずレモンと酢で仕上げ、春巻きやトンカツも焼いて脂質を控える工夫を施しています。栄養バランスに優れ、1食600キロカロリー前後に抑えたメニューは大好評。中川さんは、「仕入れも自分たちで行うし、調理は立ちっぱなしだからハード。でも、みんな喜んでくれるから、私たち自身が楽しんで取り組んでいます」と力強く話します。
配達時の声かけやアンケートなど、きめ細かな見守りを行っているのも特徴です。利用者の女性は、「本当に美味しいお弁当。玄関先まで届けてくれて助かるし、ちょっとした会話やボランティアさんの笑顔に、元気をもらうんですよ」と嬉しそうに話してくれました。
他の配食ボランティアとの交流で活動がより豊かに
燦燦では、他にも「会食のつどい」や「うたごえ喫茶」などの活動も行っています。いずれも高齢者の憩いの場となっており、「ここに来るために元気でいたい」と話す利用者も。喫茶利用したお客さんが、その味と取り組みに惚れ込み、定年後のボランティア活動の問い合わせする人もいるそうです。現在のメンバーは、配達のみのスタッフを含めて16人に増加。総会や理事会を開いて、より住みやすい地域にするための意見交換を行っています。
また、市の配食サービス協働プラットホームや社協主催の配食シンポジウムにも積極的に参加。配食に関わる他の団体と互いの活動を報告し合い、配食先のマップ作りなどを通して地域との連携を模索しています。