「誰かにちょっと手伝ってもらえたら...」。そんな日常の困りごとを地域の住民同士で助け合い、解決する仕組みが宮津市にあります。
同じ地域住民の立場からご近所さんを手助け
「足元、気を付けてくださいね。ゆっくりでいいですよ」、階段の手すりにつかまりアパートの2階から降りてくる藤原映子さんに、協力者の水谷佳子さんが声をかけます。
介助するのではなく、水谷さんは階段の下から藤原さんをじっと見守ります。藤原さんが降りて来たちょうどその時に送迎サービスさんの車が到着、2人はそれに乗り込んで病院へと向かいました。水谷さんは、足の悪い藤原さんの通院に付き添う「かけはしさん」です。
水谷さんが参加しているのは、宮津市社協が2013年2月から行っている住民参加型在宅福祉サービス事業「暮らしのかけ橋」。参加している協力者は「かけはしさん」と呼ばれています。「暮らしのかけ橋」は、介護保険制度や既存のサービスなどでは対応できない「小さな困りごと」を抱えている住民と、それを手伝うかけはしさんをつなぎ、「一緒に」解決するというもの。重要なのは、「かけはしさん」はあくまで「ご近所さんを手伝う地域住民」という立場であり、「特殊な技能を持つサービスの提供者」ではない点です。
丁寧なヒアリングで地域の課題を収集
「暮らしのかけ橋」の利用を電話で社協に申し込むと、社協職員が依頼者宅を事前に訪問してヒアリングを行います。自宅を訪ねることは、依頼内容以外の課題にも気付く機会でもあり大切にしているそうです。
「困っている人と社協のつながりをつくることと、多様な声をきめ細かく拾うこともこの事業の目的です」と専門員の上辻孝太さん。高齢化率が約35%という宮津市は、全国の高齢社会の問題を先取りしている地域と言われます。利用者への聞き取りを通じて、宮津の福祉における地域課題やサービスのあり方を考えるヒントを見付けたいと言います。
登録者は54人さまざまな関わり方が
依頼の大半はお年寄りからで、冒頭の藤原さんもその一人。買い物や通院の付き添いのほか、ゴミ出しやテレビを設置する手伝いも依頼したことがあるそうです。「転倒するのが恐くて、一人での外出を不安に思っていたところ、チラシを見て社協に電話しました。一人暮らしなので、誰かと話せるのも楽しみです」と藤原さん。
現在「かけはしさん」の登録者は54人。60代が多く、中には活動できる時だけでも手伝いたいという30~40代の人も。無理なく関われる人が多いほど、地域のつながりが広がりそうです。