郊外型の住宅街が点在する舞鶴市。人口の減少や交通の便の悪さなど、市内の住宅街が共通で抱える生活課題に、住民同士が力を合わせて立ち向かう地域の姿がありました。
40年の歳月とともに住民同士の関係が希薄に
中舞鶴地区西部の高台に広がる白浜台は、1970年代に開発された住宅街。当初は子育て世代で賑わったこの地域も、40年の歳月を経て高齢化が進行し、ひとり暮らしのお年寄りが増加。買い物できる商店や病院などが近くになく、車を運転できない人には決して暮らしやすいとはいえません。
そのような状況で自治意識の芽生えを決定づけたのは、2011年3月に発生した東日本大震災でした。未曾有の大災害を目の当たりにして、行政に頼りきりではなく、ふだんから住民同士で支えあい、いざという時に結束力を発揮できる地域にしたい。そこで舞鶴市が実施する「地域づくりサポート制度」に応募、10年先を見据えた地域ビジョンを策定するため、2011年11月に委員会が設置されました。
今ここにある人とモノを活かし地域が動き出した
「白浜台地域ビジョン」を作るにあたって、「当初は『バスが来ない』、『交通の便が悪い』といった問題ばかりが山積し、会議が一向に進みませんでした」と、世話役の臼井和久さん。「しかし、ないものの話ばかりしても仕方がない。「そこで『今、自分たちの地域、白浜台にあるものは何か』と考え始めたら、この地域には様々な活動を行い、専門知識や技術をもつ人材がたくさんいることに気付いたのです」。しめ縄づくり、ハーモニカや尺八、オカリナの演奏、地域は人材の宝庫でした。
支えあうまちづくりを目標に地域ビジョン策定委員会を結成して、まずスタートしたのがサロン。運営のノウハウや他の地域の事例など、市社協が提供する情報を活用しながら試験的に開催、工夫を重ね、今では年間延べ300人、1回平均20人が参加するまでになりました。また、春は「紅しだれ桜コンサート」、夏は「白浜台納涼祭」、秋は「コスモス祭」といった老若男女が一体になって楽しめるイベントも企画し、顔の見える関係づくりに力を入れています。さらには安心安全なまちづくりを目指して自主防災部を設置、危機対策マニュアルの作成や防災訓練なども行っています。
活動の担い手が増え地域支え合いサポーターにも登録
「やっている人を見ていて、私もできることを手伝いたいと思った」と活動を始めた人もいます。社協が推進する「地域支えあいサポーター」に現在では白浜台から6人が登録し、民生委員や組長などと連携しながら見守りや声かけの活動を行っています。民生委員の藤原正春さんは、「民生委員とサポーターが一緒になって取り組めば、見守り活動が重層化され心強い」と言います。
「未来につなげよう 支えあい 助けあい ふれあいある まち 白浜台」、この合言葉を回覧チラシには必ず載せ、周知する工夫もしています。「不便もあるがこの地域に住み続けたい」、「この地域が好き」という思いをもつ住民が増えればと続けてきた地道な取り組みが、実を結び始めています。