〜お客さまが待っている!!〜
久美浜町に北島三郎の歌声が響く時、ジョイクックおくだの買い物送迎車がやってきます。ドライバーは2代目店長の奥田さん。利益度外視の地域貢献事業に懸ける奥田さんの熱い想いに迫りました。
「昔は外販をしていたんだよ」、買い物送迎を始めたきっかけを尋ねると、奥田さんはそう語り始めました。60年に渡り、営業を続けるジョイクックおくだ。「買い物送迎」を始める前に約30年間4トンバスに品物を積み、外販を行っていました。しかし3年前、4トンバスが故障、外販を続ける事が難しくなってしまいました。その時、奥田さんに宿った強い想いは「今までのお客さまに迷惑をかけたくない」というホスピタリティ精神。「品物を持って行けない、お客さまが自分でお店に来るのは難しい、ならば迎えに行こう!!」。奥田さんが新たな活動のハンドルを握った瞬間でした。
〜久美浜を走る!サロンカー!!〜
ジョイクックおくだの買い物送迎を利用している方は約60人。利用者はどなたも80歳を超えています。買い物送迎を行う時は、利用者の好きな曲、今では北島三郎の曲をスピーカーで流しながら、行き帰りも楽しめるよう工夫をされています。利用者の皆さんにこの取り組みの感想をお聞きすると溢れんばかりの笑顔で「みんな楽しみに待っています!」とお答えいただきました。送迎の際に乗り合わせた方々でお話しするのも楽しいし、自分で買い物が出来ることが嬉しいとの事。車の中で「今日は何を買おうか?」「〇〇さんは今日は来ないのかなぁ?」と話に花が咲くそうです。買い物支援だけでなく、地域のサロンの場となっている車内。ジョイクックおくだの買い物送迎車は地域を走るサロンカーと言えるでしょう。
〜利用者の「ありがとう」と笑顔が活力です!〜
買い物送迎の費用について聞くと、「赤字事業です」と苦笑いを浮かべる奥田さん。奥田さんとしては、より広い地域で買い物送迎を行いたいという想いがあるそうですが、費用の壁に苦しんでいます。「ガソリン券でもいいから欲しいです」と、利用できる補助金がないかを京丹後市社協(以下、社協)にも協力していただきながら模索されています。そんな苦しい中でも「私の人件費はみんなのありがとうの声。みんな親みたいなものだから」と、奥田さんは買い物送迎にどこまでも前向きでした。買い物送迎を求める声がある限り、今日も奥田さんはハンドルを握ります。
〜一緒に地域の食を支えませんか?〜
「一緒に買い物送迎をやれるようなお店が増えてほしいなぁ」、奥田さんはつぶやきました。段々とお店が減ってしまっていく地域の中で、支援の輪が広がってほしいという想いが零れた瞬間でした。「お店自体が減っているから厳しいだろうなぁ」と、地域の現状を理解しつつ、理想との狭間で苦悩しておられます。生きていく上で欠かすことの出来ない「食」。「食」を確保するために必要な買い物。地域でお店が減っているからこそ買い物送迎が必要となり、お店が減っているからこそ連携して買い物送迎ができるお店を探すことが困難になるというジレンマ。ジョイクックおくだのように、買い物送迎を行っているお店への支援の在り方をあらためて考えさせられる取材となりました。