「おめでとうさん、お正月はどうしてた?」、「大雪で往生したなぁ」。4人の女性たちがおしゃべりに花を咲かせているのは、9人乗りのワンボックスカーの中。野間連合区では市社協より貸与された車を活用し、「診療所通所支援バス(福祉バス)」を走らせています。
「乗らへんかえ~」の気配りを事業として実施
野間連合区は、丹後半島中央の山間部に位置し、世帯数は81戸。人口は約170人で、1/3の世帯が独居。高齢化率は6割を超えています。地区内の医療機関は、毎週火曜日に開所される診療所のみ。「診療所まで歩いたら1時間かかる。山あいで坂道も多くて、特に雪が積もる冬は危険。だから、『福祉バス』様様、本当に助かってます。」とバスを利用している大江貞子さん。「福祉バス」は、診療所への通院支援以外にも、地域の福祉的事業である敬老会等の地区行事、老人会の遠足や買い物ツアー、高齢者サロンへの送迎に活用しています。
2012年に「福祉バス」が誕生するまで、高齢者の多くは、遠くの集落から徒歩や自転車で通院しており、“足の確保”は切実な課題でした。野間連合区代表で自らも運転ボランティアをしている藤原利昭さんは、「坂道だらけの野間では、自転車や徒歩のお年寄りや子どもを見かけたら、車を運転している人が『乗らへんかえ~』と自然に声をかけ乗せていく習慣が昔からありました。そこで、それを“乗らへんカー運動”として広めようとしましたが事業(仕組み)として実施するとなると事故等へ対応の難しさが予想され、なかなか広がりませんでした。そんな折、社協から“地域住民支えあい活動支援事業”のモデル地域指定を受けないかとの声がかかり、地区と社協で協議を重ねた結果、地区住民の合意を得て、地区が社協から車を借り、車の整備費・保険費等は社協、燃料費は連合区が負担するという形で、バスを走らせることが実現しました。」と語ります。
暮らしてきて良かったといえる野間を目指して
連合区では2013年に「野間地域づくり計画書」を策定し「野間地域にある全ての社会資源と住民の力を活かし、『暮らしてきて良かった』といえる地域、『暮らし続けられる』地域を作り上げる」という地域ビジョンを掲げています。「福祉バス」もこうした連合区の力強い取り組みの一つですが、今や地区に暮らす高齢者にとって「無くてはならないもの」となっています。「『暮らしてよかった』と思えるように、自主防災組織の立ち上げや地区行事(区民運動会・文化祭・伝統芸能・納涼祭等)の活性化、人と人のつながりを実感できる場をつくることや、暮らしや自然を記録に残す(カレンダーやDVD制作)などの取り組みもあり、毎日忙しくさせてもらっています。」といきいきと話す藤原さん。このリーダーの支えとなっているのは、73歳になる最高齢の運転ボランティアが「いずれ自分も世話にならんなんので、お互いさまだ」と話してくれたこと。このような地域の人の思いがたくさん込められて「福祉バス」は走っています。