〜メンバーみんなが真面目で努力家!
要約筆記サークル ダンボの活動を取材しました!〜
大きな耳を持つ子ゾウ、ダンボがサーカスで活躍するまでの成長を描いた「ダンボ」という物語をご存知ですか?
「ダンボのように耳を大きくして、聞こえない人の耳代わりになって伝えたい。みんなで情報を伝えていこう!」そんな思いから、城陽要約筆記サークル ダンボは誕生しました。
代表の北尾 朋子さんと立ち上げメンバーの一人で、現在も活動を続ける林 長子さんにお話しをうかがいました。
取材に行ったこの日は、毎月2回行われているダンボの例会の日でした。
例会では、メンバーが参加した行事の報告、今後の行事予定の情報共有を行っていました。
顔が見合えるように机はロの字にし、真ん中には、発言者の名前と発言内容の要点を書くメンバーがいました。これが要約筆記です。要約筆記の内容は書画カメラを通じ、会議室の壁に映され、例会が進んでいきます。
「ダンボのメンバーはみんな真面目で努力家の人が多いんです。信頼できる心強いメンバーです」と林さんは笑顔で話されました。一人ひとりのメンバーが積極的に、責任感を持って活躍しているダンボはどのように生まれたのでしょう。
〜「要約筆記を城陽市にも!」そんな声から生まれた講座〜
他の市で要約筆記を行っていた方から「城陽市でも要約筆記の活動をして欲しい!」という声を受け、林さんは2人の仲間と一緒に、要約筆記の活動者を増やすため講座を始めました。しかし、講座の参加者は少なく、林さんたちは悩んでいました。そんな中、難聴者協会が設立されたことを機に、林さんたちの活動は進展していきます。協会と協力しながら、講座を開き、要約筆記の活動者の育成を進めていきました。徐々に講座の受講者は増え、講座を修了した人が活躍する場として、ダンボは誕生しました。
北尾さんも講座を受け、ダンボに加わった一人です。講座を受けようと思ったきっかけについて、「耳が聞こえづらい人と関わるボランティア活動があると聞き、興味を持ったんです」と教えていただきました。北尾さんは10年以上、ダンボで活動されています。
活動する中で苦労もあったそうです。「要約筆記のやり方や伝え方をご存知ない市民の方から『ちゃんと書けていない』と言われたことがありました。その言葉にショックを受け、ダンボを離れたメンバーもいます」と林さんは寂しそうに話されました。そんな状況を「なんとかしたい!」と思い、市民のみなさんが参加する講演の前に、文字映像を流し始めたそうです。その内容は、「要約筆記は聞こえが不自由な方に書いて伝える筆記通訳です。話し言葉の20%しか書けませんので、略字や略号を使います」というような要約筆記の特徴を説明するものです。「要約筆記の啓発はまだまだ足りていないと感じています。今後も力を注いでいきたいです」と林さんは力強く話されました。
〜ダンボの活動を支える鍵は「記録」!〜
ダンボが力を注いでいる活動にサロン(年3回)と安否確認もあります。
サロンは毎年テーマを掲げ、参加者の気持ちが明るくなるような活動を目指しています。テーマは、参加者のくらしに彩が添えられるようなものや、時代の流行に合ったものにすることを心がけているそうです。
「今年は多くの災害があったので、防災をテーマにしました。防災マップを用いて、参加者みんなの自宅に印を付けていきました。参加者からは『こんな近くに要約筆記の人がいたなんて!不安が和らぎました。』という声もあり、とても好評でした」と北尾さんは笑顔で話されました。
「他にもダムが決壊した際に被災した方の体験をみんなで聞いて感動しました。あと、避難所で使える新聞紙スリッパをみんなで作ったんですよ」と林さんからは更に詳しくサロンの内容を教えていただきました。
ちなみに昨年は、「お茶のスペシャル・イヤー」として京都府が様々なお茶のイベントを展開していたことから、お茶をテーマにし、お茶の生産者さんから話を聞いたり、小川流煎茶の先生のお点前を拝見したり、お茶をみんなで飲みながら談笑をしたとのことでした。
そんなサロンの様子は毎回、記録しているそうです。ファイルを見せてもらうとこれまでの活動内容の記録や活動風景の写真がたくさん綴られていました。
「次の世代のメンバーに活動をつなげて行くためにも、記録は大事にしているんです。」と林さんは話されました。
記録を大切にしているのは、サロンだけではありません。安否確認でも登録者ごとにファイルを作り、やりとりの記録が丁寧に綴じられていました。
「毎月1日と15日、メールやFAX、電話などで様子を確認しています。そこで入院が分かった方のお見舞いに行ったり、『ちょっと気になるな』と思う方のところを訪問したりしています」と林さんから具体的な活動内容について教えていただきました。
2012年、一人暮らしの高齢者を対象に始まりましたが、「聞こえづらくて外出が億劫」、「日中は一人になるため、寂しい」という声を受け、現在は一人暮らしに限定せず、見守りをしています。最初は6名だった登録者も、現在は9名になりました。
「登録者1名につき、3名のメンバーが見守りをしています。1~2年ごとにメンバーが交代するので、引継ぎのためにも記録はとっても大事なんです。」と北尾さんは話され、丁寧な記録が細やかな見守りにつながっていると感じました。
サロンの参加者の中には、難聴者協会に入ったばかりの方や聞こえにくいため地域のつながりが薄い人もいますが、サロンに来ることで、新たなつながりが生まれています。また、安否確認では、買い物帰りなどちょっとしたついでに家を訪問することもあるそうです。このような日々の活動の積み重ねが、孤立を防ぎ、いきいきと暮らせる地域の実現につながっていると感じました。
〜ダンボは人生そのもの 出会った人たちとの忘れられない思い出〜
「ダンボの活動で印象に残っているエピソードはありますか?」と尋ねると、北尾さんと林さんは口を揃えて、「あの人の話は忘れられないね」と言いました。
「施設に入所したり、病院に入院したりを繰り返している人がいたんです。環境が変わっても、私たちはずっとメールなどでやりとりを続けていました。その方は他界されましたが、『ダンボの皆さんからのメールが生きる力になっていた』とご遺族の方から聞いたんです。その時は嬉しかったですね」と林さんは話されました。
サロンでの嬉しかったエピソードについて、参加者みんなで作ったカレーを食べていた時、普段は少食の人が、3回もおかわりをされたことがあったと教えていただきました。その様子を見て、一人暮らしの人にとって、みんなで同じテーブルを囲み、わいわい話しながら食べる時間は大切であることを感じられたそうです。
そんなダンボの活動について、「生活の一部。私の人生そのもの。ダンボを通じて出会った人とのつながりが生きがいです」と林さんは目を輝かせます。
「ダンボに参加してから世界が広がりました。出会った人は心配りが上手で、知識が豊富な方ばかり。自分の人生が広がったように感じます」と北尾さんも嬉しそうに話されました。
〜これからも外へ一歩踏み出せるお手伝いを!ダンボから皆さんへのメッセージ〜
北尾さん:「難聴者協会にも入っていなかったり、なかなか社会と関わりを持てていない人は、ぜひサロンに参加して欲しいです。外へ一歩踏み出せるお手伝いをこれからもしていきたいです。」
林さん:「聞こえづらくなったとしても、ダンボがあることを知ってもらいたいですね。要約筆記のことも知ってもらいたいです。ぜひ私たちのメンバーになってもらいたい!」
冒頭で触れた物語「ダンボ」。子ゾウのダンボは大きな耳で空を飛び、サーカスの人気者になります。この物語のように、ダンボがこれからも地域で活躍し続け、みんなから親しまれる存在であってほしいと思いました。