高齢化率が府内で最も高い伊根町。その中で独居男性の閉じこもりを防ぎ、仲間づくりを進めようと、一人暮らしの高齢男性のためのサロンが開かれています。
食卓を囲む幸せを再確認できる昼食づくり
「ちょっと薄味すぎたか?」、「こっちでネギ切ってるで」。伊根町老人福祉センター「泊泉苑」の栄養指導室から聞こえる賑やかな声。ピンクやオレンジのエプロンと三角巾を身につけた男性たちが、コンロや調理台に向かいます。
彼らは伊根町社協の事業、「男性サロン」の参加者たち。サロン活動の一つ、昼食づくりに取り組んでいます。調理から盛り付け、片付けまでを自分たちで行うので、自然と身体を動かす量が増え、会話も弾みます。「以前は台所に立つことはなかったけど、今では習った料理を家でも作るようになったよ」、参加者の一人が、自身の変化について教えてくれました。
参加者の元気を生み出す役割分担の工夫
伊根町は65歳以上のお年寄りが1,021人と43.4%を超え、そのうち一人暮らしが224人(2014年4月現在)の「超超高齢社会」。中でも一人暮らしの男性は多く、地域で孤立しないようにという社協の働きかけで、65歳以上の独居男性が気軽に集まれる男性サロンが2009年に設立されました。
もともと顔見知りが多い地区。社協職員の呼びかけに、元民生委員や栄養教諭ら3人のボランティアスタッフが集結。これまで培ってきたネットワークを活かして、地域に声をかけるとすぐに反応があったと言います。サロンの前日に社協の職員が電話で参加を確認、当日は職員とスタッフが協力して声かけをするなど、利用者の些細な変化も見逃さないようなフォロー体制を作っています。
参加した人たちのかつての職業は、漁師、農家、伝統工芸士、公務員など様々で、昼食の後にはそれぞれの趣味や得意分野の「先生」となり、率先してモノづくりやスポーツに取り組みます。ポイントは、班単位の作業を多く取り入れ、自分がやらないと結果がでない仕組みがあること。一人ひとりの役割と居場所を作ることで、心に張りが出ると言います。
地域ぐるみで支え合って多彩な活動を実現
「参加する方はほとんど外食することがないので、たまにナイフとフォークを使った洋食にも挑戦します」と話すのは、メニューを考案する栄養士の小西二美子さん。地元の小学校に掛け合って、食器類を貸出してもらっています。また、保健センターの協力で保健師による健康チェックや、駐在所による犯罪予防講演会、年に1回は役場のマイクロバスで遠足も実施。年に一度男性サロンをされている他町との交流会も行い、ハンドベル等の練習の成果も披露しています。地域の多様な機関と積極的に連携することで、より充実した活動を実現しています。