出前囲碁ボランティア代表居相重光さん、福知山囲碁協会代表岡田知さんに活動について取材させて頂きました!
(取材日:平成30年5月14日(月))
~囲碁との再会、人生の彩~
居相さんが囲碁と出会ったのは幼少期。実家の縁側でお父さんが近所の方と打っていたのを見てルールを覚えたそうです。ルールを知ってはいたものの実際に打ってみたのはさらにその後、社会人となった20代。その頃はまだ会社の上司に昼休みに誘われた時に打つ程度だったそうです。そして、今から10年程前、70代になるまで囲碁と離れ、バリバリ働いていた居相さんでしたが、過労で倒れてしまいました。さすがに働き続けることが難しくなってしまい退職。一日の過ごし方に悩む日々が始まりました。療養のために訪れた温泉で思わぬ「再会」が待っていました。そこには囲碁を打つ人の姿があったのです。
そこから囲碁を打つ日々が始まりました。そんな中、顔なじみからの囲碁のお誘いがありました。その方も、定年を迎えられ、一日の過ごし方に悩んでいたそうです。このことをきっかけに、居相さんは「囲碁を打ちたいけど相手がいない」という方の家まで行き、囲碁を楽しむという出前囲碁ボランティア活動を始めていきます。
Q.何故、「出前囲碁」という形での活動を考えられたのですか?
居相さん)参加者にとって最も落ち着いて囲碁を打てる形、最も楽しんで囲碁を打てる環境を大切にしたいと思っています。それに、囲碁を打ちたいけど相手や場所がないという「囲碁から疎外される方」を出したくないと思っています。
~囲碁も活動も負けず嫌いが伸びるコツ~
活動にあたって、福知山囲碁協会に声を掛け、ボランティア活動者の募集を依頼したところ、18人の方から手が挙がりました。しかし、「落とし穴」もありました。囲碁協会を通じて活動に参加された方は有段者であり強かったのです。「実力が近い人と打った方が楽しいのではないか?」と参加者から声が挙がったこともあり、参加者と実力が近い方の発掘にとりかかることになりました。この出来事こそ「参加者に楽しい1日を!」という考えが、出前囲碁ボランティアの最終的かつ最大の目標となった瞬間だったそうです。そうして、居相さんが所属していた福祉会館囲碁同好会のメンバーに声を掛け、3人の方に活動に参加いただけることになりました。
平成29年秋、福知山市社会福祉協議会(以下、市社協)からボランティア連絡協議会への参加のお誘いをされ、総会に参加したことが大きな転機となりました。
Q.ボランティア連絡協議会総会はどうでしたか?
居相さん)ただただ圧倒されました…
Q.どんなところに?
居相さん)ボランティア連絡協議会に入っている約50団体の活動報告がどこも素晴らしく、これはいかんと思いました。このままではいかんと思ったからこそ市社協にも協力してもらって活動するようになりました。
総会後、市社協に協力して頂き、出前囲碁ボランティアの参加者募集チラシを作成し、福知山市全域で、より多くの人を対象に活動する事にしました。すると、その後の10月からの半年間で104回もの活動を行うほどになりました!!
Q.ここまで活動を広げるのは大変ではありませんでしたか?
居相さん)大変ではありましたが、参加者の方の笑顔、「ありがとう」の言葉が何よりの励みになりました。私たちとしても囲碁を打つことは楽しいので、今後も楽しく頑張っていきたいです。
熱い想いと活動戦略
Q. 今後の活動目標は?
居相さん)囲碁の魅力を発信していくこと!囲碁の楽しさを伝えていくとともに、囲碁をやりたいけど相手がいない、やってみたいけどルールが分からないという人を発掘したいと思っています。
岡田さん)それに出前に行く人が活動しやすいように交通手段を確保し、活動者を増やしていきたいです。
〜地域で広げる「橘中(きっちゅう)ノ楽」〜
Q.居相さんにとって出前囲碁ボランティアの活動とは一言で言うと何でしょう?
居相さん)人生最後の御奉公ですね。
Q. 御奉公とは?
居相さん)仕事を退職した後、時間を持て余して、何をすればいいのかわからないという日が続きました。けれど、囲碁と再会してからは毎日が楽しくて、生きがいを感じています。そんな毎日をくれた囲碁に本当に感謝しています。残りの人生、囲碁に奉公していきたいです。
居相さんが瞳を輝かせてお話をしてくれました後、岡田さんが「囲碁の由来を知っていますか?」と私たちに優しく問いかけられました。
「囲碁の由来は、橘の実から笑い声がしたから割ってみると中に2人の仙人がいて、囲碁を打って楽しんでいたという故事から「橘中ノ楽」と言います」と説明して下さいました。
囲碁の勝負は1時間以上かかることが多く、相手がどのように詰めてくるか未来を予測して俯瞰し碁盤を捉える。囲碁以外のことを考えていたら負けてしまうので、勝負の時間は我を忘れて没頭している分、心地よい疲れが体に染み渡りますと居相さん、岡田さんはしみじみと語ってくださいました。
囲碁は勝負がついたら終わりではなく、勝負を分けた局面の振り返りや「今日は上手に打てたね」と感想を言い合うのが特徴で、人と人が心を交流させ、互いに楽しい時間を共有するという意味合いが強い遊技です。参加者の笑顔という最高の報酬を受け、人と人が繋がっていく「出前囲碁ボランティア」はまさに、活動者と参加者、地域をつなぐ「橘中ノ楽」のひとつと言えるでしょう。