〜地域のふれあいの場を守る〜
綾部市西八田地区に広がる穏やかな田園地帯に笑いの花が咲いています。花の名は、「西八田ふれあいサロン」。「ひとり暮らし高齢者の方や障がいのある方たちが、昼間ひとりで家にいるより、みんなで会話が出来る場所を」という願いから活動をスタートし、京都府内では珍しい毎日開催型のサロンを運営しています。
このサロンは歴史が古く、平成15年に設立され、今年度で16年目を迎えます。「西八田ふれあいサロンは、農協購買部の撤退から産声を上げたのよ」と話すのは前代表の渋谷智美さんです。渋谷さんに16年前にタイムスリップしていただき、活動の誕生秘話についてお話をうかがいました。
平成15年3月末、地域の交流の拠点のひとつであった西八田農協の購買部が撤退することになりました。「このままでは住民が気軽に触れ合える場がなくなる」という危機感を抱き、渋谷さんを中心とする仲間10数名が資金を出し合い、同年8月に地域住民が気軽に集える場を目指して、サロンを設立しました。
〜心強い協力者たち〜
西八田ふれあいサロンの活動には、地域の自治会や社会福祉法人も協力をしています。
現在、開催している場所は、(福)松寿苑のご好意で、建物内の一室を安価で借りています。また、松寿苑のデイサービスを利用されている方が、コーヒーを飲んだり、色々な方とお喋りしたりするためにサロンに立ち寄られるなど、地域にとってもなくてはならない憩いの場のひとつとなっています。
渋谷さんは優秀な営業マンの一面も有しておられます。どこのサロンでも課題になっている、来たくても来られない方の交通手段の確保…。それを解決するために2つの方法を実施しておられます。1つ目は、出前型を取り入れ、西八田地区6町区に出向き、ご近所で気軽に集まることができるよう、地元の公民館でサロンを開催しています。
2つ目はサロンへの送迎サービスを行っています。渋谷さんが綾部市内で移送ボランティア活動を行っているNPO法人「あやべ福祉フロンティア」に赴き、協力をお願いすると、理事長さんから「何とかしましょう」と賛同いただき、送迎ボランティア9名の会員が登録され、協力を得ることができました。
〜活動の報酬は皆さんの感謝の気持ち〜
サロン会場の掲示板には利用者が書いたお礼状が貼ってあります。文面から感謝の気持ちが溢れていました。現在の代表である大西美枝子さんは、手紙の内容を紹介しながら、嬉しかったエピソードをお話してくれました。
毎年、1月に色鮮やかなおせち料理を手作りで調理し、80歳以上の高齢者や障がいのある方に配達されています。今年は101名の方に手渡しされたそうです。その際に「楽しみにしていたよ」「色鮮やかな食材で嬉しかった」「とてもおいしかったよ」と利用されている方々が皆さん笑顔で声をかけてくださったそうです。
「喜びの声を聞くとやめられませんよね」と大西さん。周りのスタッフの皆さんも同様にウンウンと頷いておられたのが印象的でした。
サロン活動が16年も活動を続けることができたのは、利用されている方の笑顔を活動者の皆さんが自分の喜びとしてされていたからではないでしょうか。
〜この場所はサロンという名の家族の空間です〜
「このサロンは皆さんにとってどのようなものですか?」と改めてお聞きすると、あるスタッフの方は「サロンに関わることでワタシ自身が若返る。今までお会いしたことがない方と出会える貴重な場です」。80代のスタッフの方は、「月の半分はサロンに来ている。もう生活の一部よ」と笑いながら教えてくれました。
「毎日来ている人が来ていないと心配になるので、町で出会った時に声かけをするの。元気にしているか心配でね」との声も。サロンで出来た繋がりを大切にしている事が響いてる一言です。サロンの場が自然と日常の見守り活動にもつながっている様子が伺えました。
参加された方からは、「ひとり暮らしをしていると喋る人がいないから、ここに来るのが楽しみ。お友達がたくさんいるから。ありがたいこっちゃあ」と言われ、その発言を聞いていた周りの方が、「こっちゃあをそのまま記事に掲載してやってよ」と言われ、その場は笑いに包まれました。
参加者の中には編み物の先生やオルガンを奏でる方もおられ、参加される方の好きなこと、得意なことがイベントのメニューに位置づけられており、参加者が講師等を務めるなど、参加者、スタッフの枠組みをこえて全員が1つの家族のような温かい雰囲気のもとサロンが開催されることを心がけておられるようで、非常に心地よい空間でした。
〜地域へのメッセージ〜
大西代表は、「もっともっといろいろな人に来てほしいな。どうしたら、沢山の方に来て頂けるのか、考えていきたいです」と言います。
以前は、夏休みに小学生が来て宿題をした後に、抹茶を飲んで交流を行ったり、近くの幼稚園児とお弁当を一緒に食べることもあったそうですが、現在は子どもが少なくなり、交流が途絶えているようです。
大西代表が描く西八田サロンの未来図は、立ち上げ当時に掲げた「地域住民の誰もが支え合っていける福祉の活動の発信拠点となり、西八田地区の住民が気軽にふれあいのできる場を提供すること」を守り継続していくこと。
だからこそ、高齢者、障害のある方、子どもたち、すべての住民にとって、必要とされる場所となるべく、毎日サロンを開催し、皆さんの参加を待ちつづけておられます。
最後に取材を終えて会場を後にしようとしたとき、掲示板に歌詞が書かれていたことに気づき、「何の歌ですか」とお尋ねすると、なんと、渋谷さんの夫が作詞された綾部市歌でした。歌詞は最後にこのように締められています。「ああふるさと、われらのまち 綾部」と…
「われらのふるさと」を守り、次世代につなぐための活動はこれからも色あせることなく輝き続きます。西八田地区サロンの取組みに今後も注目です。